私がウィッグをつけるようになるまで

見た目をカバーする、楽しむ

はじめに

ウィッグもしくはかつらと聞くとどんな印象を抱くでしょうか?

私はウィッグ、特にかつらと言う語感には、年配の男性が薄毛を隠すために使う黒くてテカテカしていて漫画やお笑いでネタにされているイメージを持っていましたが、今では自分の体の一部だと胸を張って言えるほど愛用するまでになっています。

どんな経緯でウィッグをつけるようになったのか、その経過での私の気持ちの変化について知ってもらうことで、ウィッグを試してみる第一歩をお助けできたらと思っています。

つたえたいこと

私にとってウィッグは体の一部、心の支えとなってくれるもの。
もし世間の心ないイメージで試すのを躊躇していたらもったいないよ!

脱毛症になる前

私は正直なところ脱毛症になる前は、自分がウィッグを使うことになるとは夢にも思ってもみなかったです。なんとなく高齢の方が加齢によって起こる脱毛や薄毛によってつけているイメージでした。漫画やお笑いでネタにされているのをみても他人事だからなのか何も気にせず笑ってました。

脱毛症になったとき

私が円形脱毛症を発症したのは高校3年生の時。はじめは後頭部、頭の下の方に1箇所できました。よく言う「10円はげ」くらいの大きさで、髪の毛を縛れば自然と隠せる大きさでした。
脱毛部は皮膚が露出していて肌白いとでもいうのでしょうか、髪の毛がうまく均等になっていないと白く隙間が見えてしまうのが気になって、授業と授業の合間にお手洗いに行って鏡で確認していました。

今思えば気にせずとも見えていないレベルだったのですが、とにかく隠すことに必死でした。周りにばれないよう、いつも気にしていてつらかったです。

私の高校のお手洗いはなぜか3面鏡があり、自分の後ろ姿・後頭部を見る設備が整っていたのですが、手鏡とコームを持ち歩いて、どこでもチェック・整えられるようにしていました。

学校では席も決まっているので前方の席だと、後ろの席のクラスメイトにバレるんじゃないかと気になっていました。今思えば先生に事情を話して席を後ろにしてもらえばよかったなと思います。

とにかく髪を結んで隠す、そんな日々でした。でも結んで隠せる、大丈夫と思ってウィッグをつけることは思いつきもしなかったです。そもそも高校生の私がウィッグをつけるというイメージが湧いてこなかったのです。

ウィッグとの出会い

母からの提案

発症してから数カ月、母が「ねえねえ、ウィッグ見に行ってみない?」と突然話を切り出しました。私の最初の反応は「え?ウィッグ?」と素直に驚きでした。ウィッグを見に行くまでは「私、ウィッグ別に必要じゃないよ!大丈夫大丈夫!」と思っていました。

母は私の脱毛のことを気にかけてくれていて、隠すように髪を結んで気にする私の姿や、徐々に広がったり増える脱毛部をみて、父と百貨店にお買い物に行った際にウィッグのお店に立ち寄って見てきてくれたのでした。

私が大学入学と共に上京し、実家を離れることが決まっていたのでその前にできることをしてあげたいという気持ちだったそうです。

そのころは髪を結ぶことで隠せてはいたものの発症当初から脱毛箇所も増え、頭頂部付近にも脱毛箇所があったことで隠すテクニックが必要になってきていました。思い返すと、私自身は隠せる!と思うことで脱毛症となっている自分を心の奥底では認めたくなかったのかもしれません。

ウィッグをつけること、それは私にとって病気の私を認めること、「普通の女子高校生」でなくなることを意味していました。

初めてのウィッグ試着

翌週の週末、「必要ないけど、まあお母さんが見に行ってくれたし見てみよう」くらいの感覚で両親とウィッグのお店に行きました。父は気を遣ってくれたのか他の場所で待っててくれたので、店内には母と私の2人で入りました。

店内に入ると前回母が来た際に相談に乗ってくれた店員さんがいて、その方がとても明るく迎え入れ案内してくれました。すぐにドレッサールームのような個室に通され、外からは誰も見れない空間で安心できたのを覚えています。

ウィッグには複数の型(ヘアスタイル)や種類(隠す範囲が広いものから部分的なものまで)があるのですが、店員さんが私の脱毛の範囲や髪色、ヘアスタイルをみて、似合いそうなものを選んで持ってきてくれました。

つけてみると髪の長さこそ違うものの、「わ、自然…!」と思わず声が出ました。髪の毛の質感も、色も、頭頂部の分け目も、想像していた何倍も自分になじんでいました。あの時の母の嬉しそうで安心した笑顔は私にとってもとても嬉しい宝物です。

私の選んだモデルはオーダーメイドだったため、1か月ほど待って郵送していただけるとのことで、注文後お店を後にしました。

初めての「私のウィッグ」

予定していた通りウィッグは1か月後に届きました。 ちょうど長さもぴったりで、本来は長さ調節のためにお店に行くのですが、その必要もないくらい私にぴったりでした。その頃には進行していた頭頂部付近の脱毛が、髪を結ぶだけで隠すことに難しさを感じていたので、次の日からすぐにつけはじめました。届いてからの日々というもの、「ウィッグって安心!」と感激し、髪の毛を縛らずに、人から脱毛部が見られる心配なく外に出られること幸せを感じていました。

これが私のウィッグとの出会いです。自分では思いつきもしなかったウィッグ着用ですが、振り返ると必要ないって自分がおもいたかっただけかも知れないなと思います。背中を押してもらって本当に良かった。高額なウィッグを躊躇せずに買ってくれた両親に感謝の想いでいっぱいです。

ウィッグはもう体の一部

ウィッグをつけるようになってから随分と時が経ちました。紆余曲折いろいろな心境の変化、悩むことはありましたが、今では本当に体の一部のように日常に溶け込んでいて、着用するのに10秒もかからないくらいです。(心境の紆余曲折はまた別の記事でお話しますね)

ウィッグに慣れてくると、どんなヘアスタイルが自分の地毛になじむか、ばれにくいか、自然とつかんできます。お手入れやヘアセットも慣れてきますし、自分のヘアケアをするように楽しくなってきます。

初めてのウィッグを購入してから、今ではウィッグの傷み具合や病気の進行によって新しいウィッグを何度か購入し、今は4代目のウィッグです。自分の今の生活はウィッグなしでは成り立たない場面がたくさんあります。

おわりに

私にとってウィッグは体の一部、心の支えとなってくれるものです。もしこれを読んでいるあなたが脱毛を隠したいけど「え、私かつらつけるの…」とイメージが先行してウィッグをつけるのを躊躇されていたら、一度見に行ってみてください。

外に出る時の安心感、自分の髪が好きになる感覚を取り戻せる一歩になるかもしれません。

はじめの一歩は緊張するかもしれないけど、大丈夫。少し勇気を出してみて。

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